建築デザイナー
近野裕次
Yuji Chikano
建築デザイナー。「人を育てる建築」をテーマに、空間を通じて人の成長を支えるデザインを追求。
アーティストビレッジ阿蘇096区の施設デザインを担当。
専門: 建築デザイン、空間設計
デザインコンセプト
ここは夢の時を刻む場所。デザインを通して、訪れる人の成長を支える空間をめざしました。
アーティストビレッジ阿蘇096区の設計において、私が最も大切にしたのは「人を育てる建築」という考え方です。単なる機能的な空間ではなく、そこに身を置くことで自然と創造性が刺激され、成長へのモチベーションが高まる——そんな空間を目指しました。
建築とは、そこで過ごす人の生活や活動を支える器です。特にこの施設は、若いアーティストたちが夢に向かって技術を磨き、成長していく場所。
その「夢の時を刻む」という想いを、空間デザインで表現することに挑戦しました。
「虚室生白」の空間
荘子の思想を建築に
ライブラリー(Atrium)は、中国の思想家・荘子の言葉「虚室生白」に想を得て設計しました。「空虚なほど光は満ちる」という意味に、この言葉を解釈しています。
「虚」の状態でこの施設に入ってきた人の中に、ここで学びながら光が満ちていく——そのようなイメージを具現化するため、高さ5メートルの吹き抜けを中央に設けました。
その空洞を囲うように、補うように、知の収蔵庫としてのライブラリーを展開しています。
時を刻む床のデザイン
足元に敷かれたタイルカーペットは、施設名「096区(オクロック)」の「時(o'clock)」に由来し、「時とリズムを 刻む文字盤」を表現しています。
時計の文字盤のように、円形に配置されたタイルのパターンは、 アーティストたちがここで過ごす時間が、確実に未来へと進んでいることを視覚的に示しています。
光の演出
吹き抜け空間には自然光を最大限に取り込み、時間帯によって変化する光の表情を楽しめる設計としました。
朝の清々しい光、昼の明るい日差し、夕暮れの柔らかな光——
一日を通じて空間が様々な表情を見せることで、創造性を刺激します。
音響設計
図書館としての静寂を保ちながらも、適度な生活音が聞こえるバランスを意識しました。
完全な無音ではなく、人の気配を感じられる空間とすることで、孤独ではない、仲間と共に学ぶ環境を演出しています。
施設デザインの特徴
制作スペース
集中して作業できる個別デスクと、適度な距離感を 保った配置。仲間の存在を感じながらも、自分の世界に没入できる空間設計。
共用スペース
自然と人が集まり、交流が生まれる動線設計。カジュアルな会話から深い議論まで、多様なコミュニケーションを誘発する空間。
宿泊施設
プライベートな休息空間として、心身をリフレッシュできる設計。翌日への活力を養う、居心地の良い環境。
食堂
阿蘇の空気に包まれた食堂で、マンガを作る仲間たちと同じ食卓を囲む。健康を考えた体が喜ぶ食事で、創作の一日を整えます。
デザイン哲学
人を育てる建築
建築は、そこで過ごす人の行動や思考に大きな影響を与えます。天井の高さ、光の入り方、素材の質感、動線の配置——これらすべてが、無意識のうちに人の感情や創造性に作用します。
アーティストビレッジ阿蘇096区では、この「建築が人に与える影響」を最大限に活用し、アーティストたちの成長を空間が後押しする設計を心がけました。
成長を促す空間の要素
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吹き抜けの高さ:
5メートルの高い天井は、開放感と同時に「上を目指す」という心理的効果をもたらします。
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自然光の活用:
時間の経過を感じさせる光の変化は、一日のリズムを整え、健康的な生活をサポートします。
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視線の抜け:
適度に仲間の姿が見える配置は、孤独感を軽減し、切磋琢磨する雰囲気を生み出します。
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素材の選定:
木材や石材など、自然素材を多用することで、温かみと落ち着きを感じられる空間に。
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動線の工夫:
偶然の出会いが生まれる動線設計で、予期しないコラボレーションを誘発します。
空間が育てる創造性
創造的な仕事には、集中と休息、孤独と交流のバランスが不可欠です。この施設では、一つの建物の中に、それぞれの活動に最適な多様な空間を用意しました。
アーティストは、その時々の気分や作業内容に応じて場所を選び、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を見つけられます。